ASDとは?職場での困難と支援

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、発達障害の一つであり特性は個人によって異なりますが、多くの場合、社会的な相互作用、コミュニケーションの困難さ、繰り返しの行動や興味の狭さなどが見られます。職場でASDを持つ社員への理解と支援を行うことは、彼らのパフォーマンス向上と職場環境の改善につながります。以下では、ASDの特徴、職場での課題、および具体的な支援方法について詳しく解説します。
もくじ
ASDの特徴

① 社会性・想像力の欠如
他者との適切なコミュニケーションや関係構築が困難であったり(社会性の欠如)、抽象的な概念や他者の視点を想像しにくい(想像力の欠如)傾向があります。
【具体例】
- 相手の表情や身振り、声のトーンなどで感情や意図を読み取るのが難しい
- 視線を合わせるのが難しい
- 相手の立場を想像することが難しい
- その場の空気に合わせることが難しい
- 人と関わることへの関心が薄い
- オブラートに包まず思ったことを全部伝える
- 一方的に話す
- 敬語ができない
- 挨拶ができない
- 他人の感情を理解し、共感するのが難しい
② 反復的な行動や興味の限定
特定のルーチンや物事に強いこだわりを持ち、変化に対して強い不安を感じることがあります。
【具体例】
- 特定の順番や物の配置へのこだわりが強い
- 日常のスケジュールが一定であることを求める
- 特定のルーチンや手順に従わないことにストレスを感じる
- 特定の物事に対して強い興味を持つ
- 変化に対して強い抵抗を感じる
- 興味の幅が狭く、ほかの事には極端に興味を示さない
- 正確な言葉の言い回しに強いこだわりを持つ(ラクトアイス、アイスミルク、アイスクリーム等の違いにこだわるなど)
③ 感覚過敏
音、光、触覚などに対する感覚の過敏または鈍感が見られます。
- 音、光、触感に対して過剰に敏感
- 痛みや温度の変化に鈍感
職場での困難と支援策 4選

1.業務効率の低下
ASDの人が同じ行動を繰り返すことにより、業務が進まない場合があります。例えば、資料を何度も見直したり、同じ質問を繰り返したりします。これは、未来が不明確であることによる不安が原因です。そのため、支援をする際には、その不明確な部分を明確にするような支援が効果的です。
【支援策】
- 作業手順を具体的に伝える。
- 作業内容を口頭だけでなく紙に書いて説明する
- 期待される成果物を具体的に伝える
- タスクを小さなステップに分けて提供し、進行状況を逐次確認する
- 定期的にフィードバックを提供し、「適切な行動」を明確にする
2.コミュニケーションの摩擦
ASDの人は、上司や同僚とのコミュニケーションがうまくいかず、誤解や摩擦が生じることがあります。例えば、指示を理解できなかったり、常識的な感覚なことが分からなかったり、「大体」「ざっくり」といった曖昧な指示が理解できなかったりします。これは、ASDの人が言語的及び非言語的コミュニケーションの解釈が難しいためです。そのため、支援を行う際には、相手の想像力に頼らず、具体的な指示を出すことが重要です。
【支援策】
- 指示は口頭だけでなく、紙に書いて説明する
- 「あれ」「それ」「大体」「ざっくり」などの曖昧な言葉を避け、具体的に指示する
- 業務でルーチンを確立する
- メンターや支援担当者を配置し、継続的なサポートを提供する
3.業務範囲の限定
ASDの人は、特定の興味や分野に集中しやすく、「気が利く行動」を自然に取ることが難しいため、指示が無いと他の業務に取り掛からないことがあります。これは、ASDの特性として思考を柔軟に切り替えたり、他者の視点で物事を考えることが難しいことが原因です。そのため、支援をおこなう際には、その特性を活かすような支援を提供することが重要です。それが本人に合った場合、他の人よりも多くの成果を出すことができます。
【支援策】
- 興味関心を活かした役割やプロジェクトを割り当てる
- 「気が利く行動」が具体的にどのようなものかを説明する
4.オフィス環境への不適応
音や光に対して過敏で、オープンオフィスのような騒がしい環境で集中力を欠く場合があります。特定の触感やにおいに過敏で、制服や特定の物質に対するストレスが生じることがあります。
【支援策】
- 個室やパーティションで区切られた静かな作業スペースを提供し、ノイズキャンセリングヘッドホンを許可する。
- 照明の調整や、感覚に配慮した作業環境を整える。例えば、照明を柔らかい光に変更する、エアコンの風向きを調整するなど。
まとめ|通信教材で発達障害への理解へ
発達障害を持つ人だけでなく、さまざまな背景を持つ多様な社員が安心して働ける環境を作ることは、会社全体の生産性を高めることにつながります。そのためには、発達障害の強みと弱みを理解し、どのような支援があれば業務を遂行できるのかを把握する必要があります。

発達障害の有無にかかわらず、人にはそれぞれ得意なことや苦手なことがあり、その特性は一人ひとり異なります。
この通信教材は、職場でお互いの特性を理解し合い、誰もが自分の力を最大限に発揮できる環境を作るためのサポートを目的としています。
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