なぜなぜ分析をうまく活用できる人とできない人の違い

心理コラム

「なぜなぜ分析」とは

なぜなぜ分析は、問題の根本原因を明らかにするために、繰り返し「なぜ?」と問い続ける方法です。トヨタ自動車の生産現場で発展したこの手法で、表面的な問題を解決するだけでなく、隠れた根本原因や課題を探り当てることができます。
しかし、なぜなぜ分析をうまく活用できない場合、部下のモチベーション低下や問題の見落としに繋がることがあります。本記事では、なぜなぜ分析の効果的な活用法とその失敗例について解説します。

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なぜなぜ分析が部下育成で失敗する原因

なぜなぜ分析の目的は、問題の根本原因を探り、再発防止策を講じることです。しかし、なぜなぜ分析がうまくいかないことがあります。なぜなぜ分析が失敗する大きな原因は次の3つになります。

1. 責任追及の場になってしまう

「なぜ?」を繰り返すうちに、部下のミスや責任を追及する形になることがあります
例えば、製品不良が発生した時に「なぜ検査で不良を見逃したのか?」と問いただす場面です。この「なぜ?」が部下を責める方向に進むと、部下は萎縮してしまいます
上司としては「真の原因を見つけるために質問している」と思っていても、部下には「責められている」という印象を与えるリスクがあります。

2. 抽象的な結論に終わる

「なぜなぜ分析」をしても、具体的な対策に結びつかないことがあります。
例えば、「なぜミスが起きたのか?」という問いに「確認不足でした」という答えが返ってくるケースです。「確認を徹底しなさい」というアドバイスは、一見正しいように見えますが、具体的な改善策にはなっていません。実際には、業務の過剰や不適切なスケジュール管理といった、より具体的な原因が隠れている可能性があります。これらを見逃してしまうと、同じミスが繰り返されるリスクが高まります。

3. 原因を一つに絞り込みすぎる

問題には複数の要因が絡んでいることがほとんどです。しかし、「原因は一つ」という思い込みで分析を進めると、誤った対策を立ててしまう危険があります。
例えば、製品の不良率が高い場合、製造工程だけでなく、設計、材料、さらには市場の動向なども分析する必要があります。単一の原因に絞ると、重要な要因を見逃し、問題の根本解決が難しくなります。

Warning

「なぜなぜ分析」をうまく活用できないことの一番のデメリットは、部下が責められていると感じ、その結果モチベーションが低下してしまうことです。

なぜなぜ分析をうまく活用する人とできない人の違い

「なぜなぜ分析」が効果的に使えるかどうかは、以下のポイントに大きく左右されます。これらの要素は、問題の本質に迫り、具体的な改善策に結びつけるかどうかに影響を与えます。

  • うまく使える人
    根本原因を特定することが手段であり、具体的な改善策を実施することが目的であることを理解しています。
  • うまく使えない人
    原因追求自体が目的となってしまい、問題解決に結びつかないことが多いです。
  • うまく使える人:
    責任追及したり人を責めるのではなく、システムやプロセスに問題があると考えます。
  • うまく使えない人:
    原因追及が責任追及に変わりやすく、個人やチームを責める方向に進みがちです。
  • うまく使える人:
    「なぜ?」と問う前に、関係者から事実を確認するためのヒアリングをしっかり行います。客観的な情報を基に分析を進めます。
  • うまく使えない人:
    十分な事実確認をせず、いきなり「なぜなぜ分析」を始め、主観的な結論に至ることが多いです。
  • うまく使える人:
    データや事実に基づいて客観的に分析し、感情や偏見に影響されないように努めます。
  • うまく使えない人:
    個人の経験や思い込みに頼りすぎ、誤った結論に至ることがあります。
  • うまく使える人:
    分析に基づいて、本当に必要な対策を考え、効果を検証します。過剰な対策を避け、現場に過度な負担をかけません。
  • うまく使えない人:
    十分な検証をせずに対策を講じたり、過剰な対策を実施して現場に混乱をもたらし、問題解決どころか新たな問題を引き起こすこともあります。

【事例】見積金額を間違えた時の「なぜなぜ分析」

ここでは、部下が見積もり金額を間違えた際に、上司が「なぜなぜ分析」を使って問題の原因を探る場面を紹介します。うまくいっている上司とうまくいっていない上司の対応を、ロールプレイ形式で比較してみましょう。

失敗する上司のケース

上司: 「見積もりが間違ってるぞ。なぜこんなミスをしたんだ?」

部下: 「すみません。確認不足でした。」

上司: 「確認不足じゃダメだろ。なぜちゃんと確認しなかったんだ?」

部下: 「時間が足りなくて急いでいたんです。」

上司: 「なぜ急いでいたんだ?」

部下: 「他の仕事がたくさんあって…」

上司: 「仕事が多いのはみんな同じだ。しっかりやらないと困るよ。なぜ人より仕事が多いと感じるんだ?」

部下: 「他のチームメンバーからの依頼も多くて、対応しなきゃいけないことが重なってしまって…」

上司: 「それなら、なぜその依頼を断るか、優先順位をつけて処理しなかったんだ?」

失敗する理由

  • 人に焦点を当てている
    問題の原因は「プロセス」や「システム」から探るべきですが、この会話では部下個人に責任を押し付ける形で進んでいます。部下の確認不足や時間管理が原因に見えてもこれは、表面的な症状に過ぎません。
  • 「誰が悪いか」に偏っている
    部下の行動に焦点が当たり、責任追及が主な目的になっています。本来は「なぜ確認不足になったのか?」というシステム的な問題を掘り下げる必要があります。
  • 本来の目的から逸脱している
    なぜなぜ分析の目的は、個人を責めることではなく、再発防止策を見つけることです。しかし、このケースでは部下の「確認不足」ばかりが強調され、具体的な改善策が話し合われていません。どうすれば同じミスを防げるかが議論されるべきです。

うまくいっている上司のケース

上司: 「見積もりが間違っていたようだね。どうして今回のミスが起きたんだと思う?」

部下: 「すみません、確認不足で見落としてしまったみたいです。」

上司: 「なるほど。どうして確認が不十分になってしまったんだろう?」

部下: 「時間が足りなくて、急いで処理しなければならなかったんです。」

上司: 「なるほど、急いでいたんだね。じゃあ、なぜ急がなければならなかったんだろう?」

部下: 「他のプロジェクトも抱えていて、期限が迫っていたので…。」

上司: 「他のプロジェクトもあったんだね。何が原因で調整が難しかったんだろう?」

部下: 「他のチームメンバーからの依頼も多く、その対応で時間が取られてしまいました。」

上司: 「他のチームの依頼をどのように対処するかが、今後の課題になりそうだね。」

成功ポイント

 「なぜ」を適切に問いかけることで、部下が自分の作業プロセスやスケジュール管理の課題に気づく手助けをしています。こうすることで、次に同じミスをしないための具体的な改善策を一緒に考えることができます。

まとめ|通信教材で人材育成

上手くいかないケースでは、個人の責任ばかりを追及し、再発防止策が見えないまま終わっています。一方で、上手くいくケースでは、部下と一緒に状況を振り返り、システム全体の問題点を見つけることができています。

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この記事を書いた人

株式会社Tell Tool 編集部

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